モータースポーツ > Honda Racing Gallery > その他 > weider HSV-010 GT
スポーツランドSUGOで開催された第5戦ではふたたびコーナリングマシンとしてのHSV-010 GTがその真価を発揮するかたちとなり、18号車が予選4番手からトップを走行。決勝でも僅差の2位でゴールした。勝ったのは同じくHonda陣営のケーヒン17号車で、ギャップはわずか0.025秒だった。 しかし終盤まで首位を走っていたのはライバルのマシンで、その速さには対抗できていなかった。といって、HSV-010 GTはウエイトに苦しんでいたわけではない。
「ウエイト感度は意外と鈍いんじゃないかなと見ています。50kgくらいまでは大した影響はないんじゃないかと。あの時の18号車は(ハンデウエイトが)70kgでしたが、それなりに速かった。でも鈴鹿では、がっくり遅くなりましたね。サーキットによっても感度は違いますが、やはり100kgとなると厳しくなります。GT300を抜けなくなってしまうんです。通常10kgでコンマ3秒遅くなると見ているんですが、確かに100kgとなると3秒も遅くなってしまいますね」
18号車はこの鈴鹿700kmで、改良が加えられた「バージョン2」に相当するエンジンを搭載した。当初SUPER GT用のV8エンジン、HR10EGは高回転時に発生する振動が問題になった。先代のV6エンジンと回転数はさほど変わってはいないが、V8というレイアウト上、振動は避けられない課題だった。開発陣はまず開発の重点を信頼性に置いて、バージョン1を組み上げた。「2台目以降は、気温の上昇を考慮してマップを見直して対応しました。3台目はV8としてV6に対する欠点、中低速トルクの問題を重点に部品レベルでの改良を加えました」
このバージョン3の最新版は最終戦のもてぎで投入されたが、18号車には搭載されなかった。HR10EGはリストリクターの影響を受けない中低速回転時に注目して開発を加え、下のトルクが厚い性格にしてあるという。
「直線で抜けるクルマというのは富士でしか通用しないんじゃないかと思うんです。うちのクルマは逆で、コーナーで抜いてきますね。やはりドライバーが楽になるのは上の馬力ではなくて下なんだと考えています。とはいえ、最新エンジンもドライバーが体感できるほどの差はありません。体感するには全域で5馬力以上上がらないと。でもGT300のクルマに引っかかった時に楽に抜けるような特性にはしてあります」
デビュー1年目、戦いながら開発を進めたHSV-010 GTは小暮卓史/ロイック・デュバルの手によってシリーズチャンピオンの栄誉に輝いた。