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NSXの後を継ぎ、初のFR車で新たな挑戦

2010/Honda HSV-010 GT(weider HSV-010)

コーナリング至上の前衛的マシン投入初年度で戴冠の偉業を達成

Text/Makoto Ogushi  Photos/Hidenobu Tanaka, Honda

2010/Honda HSV-010 GT(weider HSV-010)

2010年SUPER GT出場車 No.18 小暮卓史/ロイック・デュバル

前年までのNSX-GTとも、他のどんなマシンとも似ないリヤフォルム。独特の形状をもつリヤウイングはステーがフロアと繋がっており、ボディとは独立した設計となっている。

前年までのNSX-GTとも、他のどんなマシンとも似ないリヤフォルム。独特の形状をもつリヤウイングはステーがフロアと繋がっており、ボディとは独立した設計となっている。

2010年、HondaはSUPER GTにそれまでのNSX-GTに代えてHSV-010 GTという名のニューマシンを投入した。当時の新規定に合わせるように3400ccのV8エンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するFRマシンである。このマシンは5チームが走らせたが、なかでもエース格として開発の中核を担い、実際の戦績でも抜群の強さを見せたのがHondaワークスでもある童夢の18号車「weider HSV-010」だ。ドライバーには小暮卓史のチームメイトとして09年のフォーミュラ・ニッポン王者であるロイック・デュバルが新加入し、速さに磨きをかけたコンビ結成となった。

開幕戦でHSV-010 GTは、ホンダファンの期待に応えていきなりポールポジションを獲得。デビューウインを達成するかに注目が集まった。しかし雨が降り出した決勝では、オープニングラップの130Rでコースアウトを喫した上、レース中盤には3台のHSV-010 GTによるバトルに遭遇し大クラッシュ。それでも続く第2戦でポール・トゥ・ウインを果たしてその速さが本物であることを実証。第4戦と第5戦ではウエイトを積みながら連続表彰台を獲得し、最終戦では今季3度目のポールポジションから2位入賞を果たすなど快走しタイトル争いを制した。投入初年度のデビューイヤーで見事チャンピオンを獲得した。

第3戦富士から登場したロードラッグ仕様。フェンダーが盛り上がり、ノーズ両端の形状も異なる。

第3戦富士から登場したロードラッグ仕様。フェンダーが盛り上がり、ノーズ両端の形状も異なる。

HSV-010 GTはシャシー、エンジンともに2010年に新たにサーキットを走り始めた完全フルモデルチェンジ車であり、開発陣にとってはまず耐久保証が最大の課題で、熟成は次の段階の仕事であった。だが幸いにして信頼性は当初から高く、比較的開発は順調に進んだ。開幕戦の鈴鹿ではポールポジションを獲得するという幸先の良いデビューを迎えたが、他車との最高速差が大きく、開発陣としては早速ひとつの課題を抱えるかたちとなった。空力を改良するにも短時間でできるものではなく、熟成には時間が必要だった。このレースではHonda陣営内で3台のHSV-010 GTが同士打ちのアクシデントを起こした。こうした事態はHSV-010 GTの乗りやすさが原因のひとつかもしれないとHondaのシャシー開発担当、中山雅仁氏は言う。「NSXは何か起きたら修正が効かないクルマだったので、ドライバーは注意して乗っていた。でもHSV-010 GTはかなり楽に乗れる。それだけ、語弊はあるがラフに乗っている可能性はあります」。第6戦鈴鹿ではGT500初レースとなったルーキーの小林崇志がポールポジションを獲って周囲を驚かせたが、これもHSV-010 GT本来の乗りやすさがあったからだろうと開発陣は指摘する。

第2戦の岡山では、ハイダウンフォースで戦うコースで本来狙った性能を見せつけ、HSV-010 GTは初優勝を飾った。18号車は開幕戦のアクシデントの影響で2基目のエンジンを搭載して臨んだが、練習走行時に予期せぬオーバーヒートを起こして3基目のエンジンへの換装を余儀なくされた。この時点での3基目投入は厳しい事態であったが、HSV-010 GT陣営は第2戦岡山の予選で積んだ事実上バージョン1のエンジンを第6戦鈴鹿700kmの土曜日夜のセッションまで使い、その後翌日の決勝に向けて改良の進んだ4基目のエンジンを投入する作戦に切り替えた。これを使えば決勝では10グリッドダウンの措置を受けるが、レース距離が長いので挽回できるだろうという計算である。エンジン開発担当の松本雅彦氏によれば、この3基目のエンジンは「ぎりぎりライフの範囲内」だという。「エンジンライフは3200km。ギリギリの距離ですが、走行距離や使用回転数を控えろという指示は出しませんでした」

ロードラッグ仕様で臨んだ第3戦富士では、HSV-010 GTはセッティング的にまとまらないままレースを迎え、苦戦を強いられた。他陣営からもHSV-010 GTは潜在戦力があるものの、シーズン前半はセッティングに苦労しているようだと見られていた。それがまとまってきたのは第4戦セパンあたりからだという。

 

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weider HSV-010

2010/weider HSV-010[4輪/レーサー]

2010/weider HSV-010[4輪/レーサー]

SPEC

シャシー

モノコック カーボンモノコック
全長×全幅 4675×2000mm
ホイールベース 2700mm
トレッド(前/後) 未発表
サスペンション
(前後とも)
ダブルウイッシュボーン
トランスミッション リカルド製6速パドルシフト
車体重量 1100kg以上
ステアリング ラック&ピニオン EPS付
ブレーキ(前後とも) 油圧式ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前/後) 330/40R18/330/45R17

エンジン

型式 HR10EG
形式 水冷縦置きV型8気筒DOHC
総排気量 3397cc
最大出力 500ps以上
最大トルク 40.0kg-m以上
重量 非公表
リストリクター径 29.1mm×2

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