モータースポーツ > Honda Racing Gallery > その他 > ARTA NSX GT500
NSXといえば、1989年に発表され、90年代から00年代にかけてHondaの“フラッグシップ・スポーツ”の地位にあった市販車だが、実はモータースポーツの世界においてもHondaのレーシングスピリッツを体現するマシンとして、大いなる活躍を演じてきた。
95年にはル・マン24時間レースでクラス優勝を遂げるという快挙もあったが、NSXのレース活動といえば、なんといっても全日本GT選手権〜SUPER GTシリーズにおけるGT500クラスでの快走に尽きるだろう。そして、そのスピードを存分に発揮し、激戦のGT500で最終戦を待たずに王座獲得を決めるという偉業を達成したマシンこそが、このARTA NSX GT500(07年)なのだ。
97年の参戦開始から09年まで、13シーズンに渡ってGT500で戦った“NSX-GT”は、GT500の世界に本格的な空力を初めてもち込んだマシンとも言われる。NSXの登場によって、GT500はHonda/ニッサン/トヨタ(レクサス)の3メーカーが激しくもハイレベルなマシン開発競争を繰り広げる激闘のステージへと進化したのである。
当初は、その卓越したスピードがリザルトに結びつかない面もあったNSXだが、00年にはGT500ドライバーズタイトル初戴冠を成し遂げた(道上龍)。すると、途端に規則面からのミッドシップ車への“締め付け”が厳しくなるなど、NSXは苦しい戦いを強いられるようになる。素性の違う各メーカーのマシン性能を、拮抗化することが目的なのだからやむを得ない措置ではあるのだが……。あとから振り返れば00年代前半の“NSXいじめ”は少々、度が過ぎた感も拭えない。それほど「NSXは速かった」こともまた、事実だ。
もちろんHondaとしても、童夢(車体)、無限(エンジン)といった頼もしい開発パートナーとともに打開策を探っていった。一時的にターボ化という手段にも訴えることとなったりしたが、05年シーズンに向けては抜本的な手が打たれていた。新たなベース市販車、「NSX タイプR GT」投入である。“素”のポテンシャルを上げることで、大幅な戦闘力向上を狙ったのだ。そしてそれから3シーズン目を迎えた07年、ついに積年の努力が結実することになる。同年このARTA NSXは、NSX勢として7年ぶりのGT500ドライバーズタイトル獲得を圧倒的な速さと強さで成し遂げたのである。