モータースポーツ > Honda Racing Gallery > F1 第三期 > Honda RA106
中盤戦はリタイアも増えてきていたHondaだが、8月6日の第13戦ハンガリーGP、雨絡みのレースで歓喜の瞬間がやってくる。
バトンは予選4位、しかしエンジン交換のペナルティによって14番グリッドからのスタートに。このレースでは、チャンピオンの座を争っていたミハエル・シューマッハー(フェラーリ)とフェルナンド・アロンソ(ルノー)がフリー走行中のコース上での行為によってペナルティを科され、それぞれ11番、15番グリッドへと下げられており、スタート前から波乱含みの雰囲気だった。また、当時のF1は途中給油があり、しかもこのレースは雨の影響によってタイヤ選択もシビアであり続けたため、流れの読みにくい混乱状況になっていく。
見た目の順位が実状を示しにくい展開のなか、1周目を11位で終えたバトンは、7周目には4位、27周目には2位へと順位を上げていった。この時点での首位は、選手権リーダーの地力を見せつけるかのようにアロンソである。残りレース距離約3分の1の46周目に、バトンは2度目の給油のためピットへ。ここではタイヤ交換をせず、スタンダードウエットのままコースに復帰した。対するアロンソは51周目にピットイン、ドライタイヤにかえて戦列に戻るが、直後にクラッシュを喫してしまう(ホイールナット関連のトラブルがあったことが原因とされる)。
これでバトンは首位。54周目にドライタイヤを履くと、あとは勝利へ向けてペースアップしていくだけだった。時にシルキースムースとも喩えられるバトンのしなやかなドライビングが微妙な路面コンディションのなかで威力を発揮した、と見るのが妥当なレースだが、「コンサバ」と評されることもあったHonda RA106の、B・A・R Hondaの時代から培われてきた技術の総決算バージョンともいえるマシンならではの素性の良さが活きた、とも考えられる内容の一戦だった。 ハンガロリンクにチェッカーフラッグが舞う。F1デビュー7年目、バトン待望の初優勝だ。Hondaにとっては復帰7年目の第3期初優勝。Honda製エンジンとしては第2期最終レースの92年最終戦オーストラリアGP以来となる72勝目、そしてシャシーコンストラクターのHondaにとっては第1期の67年イタリアGP以来、39年ぶりの通算3勝目であった。
シーズン終盤、RA106は安定して結果を残すようになる。優勝した第13戦ハンガリーGP以降、最終第18戦までバトンは全戦5位以内でポイントゲット。最終戦ブラジルではシーズン3度目の表彰台(3位)も獲得した。バリチェロもハンガリーでの4位以降、日本GP以外は8位入賞を外していない。ハンガリーでの優勝は運に恵まれた面もあったが、中本修平らを中心とする日本主導の新体制が効果を発揮し始めていたのも確かだったのである。シリーズ順位ではバトンが6位、バリチェロも7位に続き、Honda(HRF1)のコンストラクターズランキングは4位。これはB・A・R Honda時代を含む第3期において、04年の2位に次ぐ好成績だった。
結果的に第3期唯一の優勝車となってしまったことは残念だが、RA106はHondaの誇りを守ったマシンとして、歴史にその名を刻まれている。
型番 | Honda RA106 |
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デザイナー | ジェフ・ウィリス |
車体構造 | カーボンファイバーモノコック |
全長×全幅×全高 | 4675×1800×950mm |
ホイールベース | 3145mm |
トレッド(前/後) | 1460/1420mm |
サスペンション(前/後) | プッシュロッドトーションスプリング |
タイヤ(前/後) | ミシュラン製 |
燃料タンク | ATL製150リットル |
トランスミッション | ホンダ製7速セミオートマチック |
車体重量 | ― |
型式 | RA806E |
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形式 | 水冷90度V型8気筒NA |
排気量 | 2400cc |
ボア×ストローク | ― |
圧縮比 | ― |
最高出力 | 700ps以上 |
燃料供給方式 | Honda PGM/F1 |
スロットル形式 | ― |