モータースポーツ > Honda Racing Gallery > その他 > Dallara Honda IR3
アメリカのオープンホイールレース(日欧のフォーミュラレースに相当)の最高峰シリーズは1990年代半ばから分裂期を迎えることとなり、CARTチャンプカー系のシリーズとIRLインディカー・シリーズとの併存状態は、両者が統合される2008年シーズンの開幕直前まで続いた。2000年代前半の趨勢としては、有力チームやエンジン供給メーカーがインディカー・シリーズへと軸足を移す傾向にあり、シリーズの隆盛という観点からはインディカーが単一最高峰化しつつあった。
緑鮮やかなセブンイレブンカラーを纏ったこのマシンは、2004年のインディカー・シリーズを戦ったアンドレッティ・グリーン・レーシング(AGR/現アンドレッティ・オートスポーツの前身)のトニー・カナーン車である。2011年現在はダラーラのシャシーにHonda製エンジン搭載というワンメイクでの争いとなっているインディカーだが、当時はシャシー、エンジンともにマルチメイクの時代。“シャシー・エンジン”の順列組み合わせが複数存在し、たとえばチップ・ガナッシ・レーシングは“パノスGフォース・トヨタ”で2004年シーズンを戦っていた。当時のHonda勢のエース格チームであるAGRは“ダラーラ・ホンダ”で戦っており、カナーンがこの年のドライバーズチャンピオンに輝いている(Hondaはエンジンメーカーが争うマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得)。
F3シャシーの頒布拡大によって、1990年代に世界的な量産レーシングシャシーコンストラクターとしての地位を確立したイタリアのダラーラ社は、1996年に発足したIRLインディカー・シリーズにも草創期から参画。現在実質ワンメイクとなっていることからも分かるとおり、ダラーラ製シャシーは安定して高いパフォーマンスを示し続け、多くのユーザーチームを獲得していった。
2004年というシーズンは、IRLインディカー・シリーズにとって“全戦オーバル”のラストイヤーとして記憶される。つまり、ロードコース開催が増加していく翌年以降とは違い、この2004年型までのダラーラシャシーは完全にオーバルでの戦いだけを想定して仕立てられているとも言えよう。ただ、オーバルだけがバトルステージであっても、それぞれのオーバルには形状/バンク角/1周の距離といった個性が存在する。大別するなら、距離の短いショートオーバルと、最高速400km/hの世界とも言われるインディアナポリスのようなスーパースピードウェイ(ロングオーバル)の2種だが、この写真のウイング類はスーパースピードウェイ仕様。空気抵抗軽減を最重視したものとなっている。
また、チーム独自のモディファイというものも規則の範囲内で展開されており、AGRはこのマシンの細部に独自の改良を加えて、ライバルに打ち勝つ速さを確立したのである。この年Hondaは16戦14勝(第2〜15戦と14連勝)という強さを見せつけたのだが、うち8勝をAGRが挙げている。カナーンは第2戦フェニックス、第5戦テキサス、第8戦ナッシュビルと3勝をマーク。16戦全戦10位以内、しかも15戦が5位以内で、3位以内11回という高い安定感も発揮しつつ、彼はチャンピオンの座をたぐり寄せた。
型番 | Dallara Honda IR3 |
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車体構造 | カーボンファイバーモノコック |
全高 | 937.5mm |
ホイールベース | 3050mm |
前後トレッド | 1962.5mm |
サスペンション (前後とも) |
ダブルウイッシュボーン |
ホイール(前/後) | リム幅10&直径15/同14&15インチ |
トランスミッション | X-trac製シーケンシャル6MT |
車体重量 | 692.35kg(ドライバー含まず) |
型式 | HI4R |
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形式 | 水冷4ストロークV型8気筒DOHC32バルブ |
排気量 | 3500cc(第3戦まで。第4戦から3000cc) |
最高出力 | 675ps以上 |
最高回転数 | 10300rpm |
シリンダーボア | 93mm |
クランク角度 | 180度 |
乾燥重量 | 127.12kg |