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見えていた初優勝

2004/B・A・R Honda 006(B・A・R ホンダ 006[4輪/レーサー])

2004年、シーズンを通じて優勝争いを展開した006佐藤琢磨の快走は日本人の夢を近づけ、表彰台へと持ち上げた

Text/Tetsuo Tsugawa  Photos/Katsuyoshi Kobayashi

2004/B・A・R Honda 006(B・A・R ホンダ 006[4輪/レーサー])

第9戦アメリカGP出場車 No.10 佐藤琢磨

背後に回ると複雑な気流を整える小さなウイングが林立。

背後に回ると複雑な気流を整える小さなウイングが林立。

FIA(国際自動車連盟)によってフレキシビリティを取り締まるためのリブ(補強材)の搭載が義務づけられて、ウイング問題にはケリがついたのだが、スピード変化やバンプなどでダウンフォースが急激に抜けるという006の高速コーナーでの過激な神経質さはドライバーたちを悩ませた。また、マシンの素性としてタイヤに厳しい走行特性を持ち、高速コーナーなどでは極めて繊細なセットアップが要求されていた。

006は初期にはリアウイング・セパレーターが違反扱いとなり撤去させられ、次にはフレキシブルウイングが問題とされた。さらにモナコでは毎レースすさまじいスタートを見せる琢磨のスタート装置にクレームがついた。ラウンチコントロール疑惑である。

結果は“黒ではなく灰色”ということで、プログラム等の修正が命じられたのだが、このプログラムと装置の変更後も琢磨のスタートダッシュは変わることはなかった。実際、このシーズンを通じて、彼のスタートは同僚バトンを常に上まわっていた。

現代らしくボタンの並ぶコクピット。当然シフトレバーはなく、カラフルな調整ダイヤルがセンターを陣取る。

現代らしくボタンの並ぶコクピット。当然シフトレバーはなく、カラフルな調整ダイヤルがセンターを陣取る。

どちらにしても006と琢磨は日本人ドライバーのF1初勝利という夢をもう少しで現実のものにできるところまで近づけてくれた。結果として得たインディアナポリスでの3位は日本のF1ファンや関係者にとっては勲章と言え、日本人の夢を最も現実に近づけた一瞬であった。

琢磨と006はアメリカGPの3位表彰台というリザルト以外にも、記憶に残る場面を作り出していた。ニュルブルクリンクでは軽量アタックでポールポジションを獲得したフェラーリF2004を駆るミハエル・シューマッハの真横、予選2番手に琢磨は並んだのである。天下のワールドチャンピオンが無視できない“ライバル”として琢磨を視界に捉えた。ここに初めて日本人F1ドライバーがグランプリのトップランナーからライバルとして意識される位置を得たのだ。006は日本人ドライバーをその高みにまで運んだマシンとして歴史に名を刻んだのだった。

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B・A・R Honda 006

2004/B・A・R Honda 006(B・A・R ホンダ 006[4輪/レーサー])

2004/B・A・R Honda 006(B・A・R ホンダ 006[4輪/レーサー])

SPEC

シャシー

型番 B・A・R Honda 006
トランスミッション B・A・R/Honda&Xトラック製7速
クラッチ カーボンプレート
サスペンション
(前後とも)
ウイッシュボーン/プッシュロッド+アクティブトーションスプリング&ロッカー、メカニカルアンチロールバー
ダンパー KONI
ホイール BBS
ホイール径
(前後とも)
13インチ
ホイール幅 フロント/312mm
リア/360mm
ブレーキ アルコン
(2×6ピストンキャリパー)
ステアリング ラック&ピニオン
(パワーアシスト付き)
ホイールベース 3150mm
トレッド フロント/1460mm
リア/1420mm
車両重量 600kg
燃料容量 150リットル

エンジン

型式 Honda RA004E
スパークプラグ NGK
エンジン形式 V型10気筒NA
V角度 90度
排気量 2998cc
圧縮比 未発表
最高出力 900馬力以上/18500rpm以上
ブロック素材 アルミニウム
フューエルインジェクション Honda PGM-FI
エンジン重量 未発表

F1 第三期

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