モータースポーツ > Honda Racing Gallery > F1 第二期 > McLaren Honda MP4/5B
そのネーミングからも分かるように、MP4/5Bは前年型MP4/5の正常進化型だが、外見的にはMP4/5から大きな脱皮が図られている印象を受ける。特にエアロダイナミクスの改善は顕著で、主にエアロデバイスの変更が目に付いた。サイドポンツーンはより平坦になり、排熱アウトレットも改良された。高回転、高出力化が進んだHondaの新型V10エンジンからの要求を満たすべく、ラジエターを中心に熱交換機の大容量化が図られた。しかし、シャシーの基本コンセプトは、ジョン・バーナードのMP4からの流れのままであり、もはや当初のアドバンテージは消えていた。アイルトン・セナとアラン・プロストが悩まされ続けたMP4/5のバランスの悪さをそのまま受け継いでしまったMP4/5Bは、さらにその欠点が強調されてしまうことになる。
MP4/4でゴードン・マーレイが採用したプルロッド式のフロントサスペンションを、ニール・オートレイはMP4/5Bでも継承する。プルロッドはダンパーユニットのマウント位置を自由に設計できる利点はあるものの、アッパーアームに大きな負担をかけてしまうデメリットもあり、多くのチームが採用を避けるようになっていた。このレイアウトが災いし、185cmの長身ゲルハルト・ベルガーには非常に窮屈なコクピットになった。
サイドポンツーン脇のエアアウトレットは、サーキットの特性に応じてその大きさが変更された。平均速度の低いモナコやハンガリーなどでは開口部を最大限に開き冷却効果向上を図ったが、予選など一発勝負の際には冷却機能を若干殺しても、ドラッグを減らすために閉じて走行することが多かった。
MP4/5B最大の特徴と言えたのが『バットマン・ディフューザー』と称された半円状トンネルを5つ並べたディフューザーだ。このコンセプト自体は、88年にマーチ881をデザインしたエイドリアン・ニューウェイがすでに試みており、そのアイデアを発展させたにすぎない。ただ、MP4/5から引き続き横置きギヤボックスを採用したことで、ディフューザーの設計にかなりの自由度があったことも、導入のひとつの理由だった。半円状トンネルは、確かに平板を組み合わせたものよりエッジ部のよどみや剥離を抑えられ、後方へ空気流を抜く効果も高い。しかし、それだけにフロアと路面の間隔が変化した際にダウンフォースの変化量も大きくなる。高速コーナリング中にバウンドなどすると、マシンの挙動変化はシビアになった。当時の空力部門代表であったボブ・ベルは、ハンガリーGPからオーソドックスな形状にスイッチする決断を下す。ダウンフォースの絶対値を下げることで、マシンの挙動の変動幅を小さくする処置を採らざるを得なかったのだ(スペインGPでは後部を30cmも延長するなどの変更が加えられた)。
型番 | McLaren Honda MP4/5B |
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デザイナー | ニール・オートレイ |
車体構造 | カーボンファイバー/ハニカムモノコック |
全長×全幅×全高 | 4470mm×2133mm×965mm |
ホイールベース | 2895mm |
トレッド(前/後) | 1800/1660mm |
サスペンション(前/後) | ダブルウイッシュボーン+プルロッド/ダブルウイッシュボーン+プッシュロッド |
タイヤ(前/後) | 13×11.75in/13×16.25in |
燃料タンク | 212L |
トランスミッション | マクラーレン製横置き6速 |
車体重量 | 500kg |
型式 | RA100E |
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形式 | 水冷72度V10 DOHC4バルブ |
排気量 | 3498cc |
ボア×ストローク(mm) | 93.0×51.5 |
圧縮比 | 12.4 |
最高出力 | 680ps以上/12800rpm |
燃料供給方式 | PGM-FI 2インジェクター |
スロットル形式 | 10連バタフライ式スロットルバルブ |
過給機 | 無 |