モータースポーツ > Honda Racing Gallery > F1 第二期 > Lotus Honda 100T
中盤戦からはいよいよ苦戦の様相が色濃くなっていったのだが、終盤第15戦日本GPで、中嶋は再度6番グリッドを獲得する。当時は金曜と土曜に予選が実施されていたが、土曜日の予選終盤、ピケと完全同タイム(1分43秒693)をマークしての自己ベストタイとなる予選6位だった(先にタイムを出したピケが規定により予選5位)。母国での力走、しかもチームのエースであるワールドチャンピオンと同タイムという稀有なる状況の発生に、中嶋のタイムと順位が場内放送で告げられると、セナとアラン・プロストの激烈なマクラーレン同門タイトル争いの方に関心が向いていた観客席からも拍手が巻き起こった。
実はこの鈴鹿のレースウイーク、中嶋は母親の逝去という悲しみを胸にしまって戦っていた。表彰台の期待がかかった決勝は、スタートでのエンジンストールによる出遅れが響き、猛追するも7位。それでも中嶋は悔しさを噛み締めつつ、レース後、笑顔でTVカメラに向かってこういった旨を話している。
「誰かが押してくれたから、あそこで動けたんじゃないかと思う」。下り坂でエンジンが息を吹き返し、大きく出遅れながらもスタートできたことを天国の母に感謝した中嶋。母国入賞ならず無念、と感じていた多くのファンを感動させる言葉であった。
最終第16戦オーストラリアGPでは、ピケが序盤2戦以来となるシーズン3度目の3位に入り、優勝プロスト、2位セナとともにシーズン2度目のHonda製エンジンによる1-2-3フィニッシュ。1.5リッターターボ時代の幕引きレースで、当時最強を誇ったHondaに相応しいかたちのフィナーレを演出する一翼を、ロータス100Tは見事に担った。そして、このホンダターボの伝説は、来たる2015年シーズン、まったく新たな規定下で復活することとなるのである──。
100Tは現役を退いたのちも、幾度となく鈴鹿でのイベントやビッグレース開催時のデモラン等に使用され、中嶋本人も搭乗したりして、往年の勇姿でファンを楽しませてくれている。当時からすでに四半世紀もの時間が経過した今、日本人初のF1フルタイムドライバーだった中嶋の戦い様を語り継ぐマシンとして、そして名門ロータス“100番目のプロダクツ”として、貴重な存在感を発揮している。
型番 | Lotus Honda 100T |
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車体構造 | カーボンファイバーモノコック |
全長×全幅×全高 | 未発表 |
ホイールベース | 2775mm |
トレッド(前/後) | 1800/1650mm |
サスペンション(前後とも) | ダブルウイッシュボーン+インボードスプリング |
タイヤ(前/後) | 11.5-13/16.3-13インチ |
燃料タンク | 150リットル |
トランスミッション | ヒューランド縦置き6MT |
車体重量 | 540kg |
型式 | RA168E |
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形式 | 水冷80度V6DOHC24バルブ+ツインターボ |
総排気量 | 1494cc |
ボア×ストローク | 79.0mm×50.8mm |
圧縮比 | 9.6:1 |
最高出力 | 685ps/12300rpm |
燃料供給方式 | PGM-FI 2インジェクター |
点火装置方式 | CDI |
過給機 | IHI製ターボチャージャー×2基 |
潤滑方式 | ドライサンプ |