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無敵の存在

1988/McLaren Honda MP4/4(マクラーレン・ホンダ MP4/4[4輪/レーサー])

1988年、16戦で15勝を挙げ「無敵」の強さを誇ったマシンターボ時代を象徴するかのような、低いフォルムが輝きを放つ

Text/Tetsuo Tsugawa  Photos/Koji Miura

1988/McLaren Honda MP4/4(マクラーレン・ホンダ MP4/4[4輪/レーサー])

第12戦イタリアGP出場車 No.12 アイルトン・セナ

好燃費&ハイパワーのRA168Eエンジンを搭載したマクラーレン・ホンダ MP4/4もまた、88年のレギュレーションとHondaのエンジンに特化したマシンとして製作された。実際このマシンのリーディングエンジニアであるスティーブ・ニコルズは、これまで引きずってきたジョン・バーナード色を棄て、真新しいコンセプトのスペシャルマシンを作り上げたのである。

旧時代的な印象を受けるコクピット。右にシフトレバー、左にスタビライザー調整ノブ。赤ボタンはオーバーテイク用ブースト、青ボタンはラジオ。

旧時代的な印象を受けるコクピット。右にシフトレバー、左にスタビライザー調整ノブ。赤ボタンはオーバーテイク用ブースト、青ボタンはラジオ。

Honda V6ターボエンジンはFIAの目指したターボ締め出しのレギュレーションを、逆にすべて有利に扱ってみせた。RA168Eエンジンはクランクシャフトセンター位置を28ミリも下げてしまったのだ。これに応えてマクラーレンはワイズマンシステムをベースにした3軸ギアボックスを投入し、車体の重心を一気に下げたのである。これはブラバムからマクラーレンに移籍してきたカリスマデザイナー、ゴードン・マーレイの意見を採用したと言われる。事実、MP4/4のモノコックはそれまでのツインチューブ型を固持する古いスタイルで、太く大きなバーナード型を棄て、細く低いブラバム型に変更された。この年からペダル位置がレギュレーションで後退しているのだが、FIAが定めた150リットル制限が都合よく燃料タンクベイを縮小してくれたので、うまくホイールベース的につじつまが合ったのである。重心位置は大きく低下し、45リットル分の燃料重量が軽減され、3軸ギアボックスは全長を短くされたことで、後部の設計には自由度が増え、前年まで苦しんだエアロダイナミクスの効率を向上させたのだ。低められたモノコックとサイドポッド上面はリアウイングの効率を上げ、絞り込まれたコークパネルと3軸ギアボックスはディフューザー効果を向上させた。

前作MP4/3系よりも明確に薄く低く細いノーズ。ゴードン・マーレイの影響が小さくないことが分かる。

前作MP4/3系よりも明確に薄く低く細いノーズ。ゴードン・マーレイの影響が小さくないことが分かる。

Hondaのテクノロジーを駆使してスーパーエンジンを作り上げたとは言え、88年レギュレーションによって前年よりもエンジンパワーははるかに落ち、さらにレース燃料消費量がギリギリの苦しさであることには変わりなかった。従って燃料セーブのためにもエアロダイナミクス効率の向上、ドラッグの軽減は絶対条件。マクラーレンはこのMP4/4によって遅ればせながら新しいエアロ時代への第一歩を踏み出したのだ。

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McLaren Honda MP4/4

1988/McLaren Honda MP4/4(マクラーレン・ホンダ MP4/4[4輪/レーサー])

1988/McLaren Honda MP4/4(マクラーレン・ホンダ MP4/4[4輪/レーサー])

SPEC

シャシー

型番 McLaren Honda MP4/4
デザイナー スティーブ・ニコルズ
トランスミッション マクラーレン製6速
ホイールベース 2875mm
トレッド(前/後) 1824mm/1670mm
サスペンション
(前/後)
ダブルウイッシュボーン+プルロッド/ダブルウイッシュボーン+プッシュロッド
ダンパー ショーワ製
タイヤ(前) 11.75インチ(ホイールリム)
13インチ
タイヤ(後) 16.3インチ(ホイールリム)
13インチ
車体重量 540kg

エンジン

型式 Honda RA168E
排気量 1494cc
形式 80度V型6気筒+ツインターボ
最高出力 685馬力
最高回転数 12300rpm
燃料供給方式 PGM-FI 2インジェクター
スロットル形式 2連バタフライ式スロットルバルブ
点火方式 CDI
重量 146kg

F1 第二期

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