モータースポーツ > Honda Racing Gallery > F1 第二期 > Lotus Honda 99T
アクティブサスにまつわるエピソードとしては、常に理想的な対地キャンバーを保とうとする働きにより、ある程度こじることで発熱する予選タイヤがうまく機能せず、なかなか上位グリッドにつけないことがあった。現代風に言えばタイヤに優しいサスペンションということになるが、通常のパッシブサスで開発されたタイヤを使う以上、ベストマッチングが得られないことは当然でもあった。
このロータス99T、87年のコンストラクターズポイントは64点でランキングは3位。セナ57点、中嶋7点という内訳で、セナは低速コースのモナコ、デトロイト(今のところ、これがチーム・ロータス最後の優勝)で連勝。シーズン後半にエアロダイナミクス改善のためボディワークに手を入れる改良やタービンまわりのレイアウトをウィリアムズと同じにする改良を施してはいたが、マシンそのものの性能は決して低いものではなく、むしろチャンピオンを獲得したウィリアムズFW11B(PP12回、9勝)が圧倒的に優れていたと見る方が正解だろう。
こうした快進撃の原動力となったHonda製V6ターボエンジンはディストリビューターレスのダイレクトイグニッション方式が採用され、デトネーション(異常燃焼)に対してより細かな対応(制御)が可能となり、さらに効率よく機関を使えるようになっていた。
この年はポップ・オフ・バルブの装着で最大過給圧を4バールに規制されていたが、デトネーションコントロールにより圧縮比を7.4から8.2へ引き上げることができ、1万2000回転で1000馬力程度を引き出していたという(過給圧規制のなかった前年のRA166E型では予選仕様5バール過給時に1万1800回転で1100馬力を発生)。
翌88年、Hondaはウィリアムズへの供給を打ち切り、代わってセナの移籍先であるマクラーレンとパートナーシップを組むことになるが、この頃のF1規定は毎年のようにエンジン規定が変わり、エンジンメーカーは対応に忙殺される状況だった。Hondaを追い込むための規定変更とも受け取れたが、基礎研究の分野も含めて過給技術に長けていたHondaが他のエンジンメーカーを圧するかたちとなっていたことは皮肉であった。
型番 | Lotus Honda 99T |
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デザイナー | ジェラール・ドゥカルージュ |
車体構造 | カーボンファイバーモノコック |
全長×全幅×全高 | ― |
ホイールベース | 2750mm |
トレッド(前/後) | 1800/1660mm |
サスペンション(前後とも) | ダブルウイッシュボーン+電子制御アクティブサス |
タイヤ(前/後) | 11.5-13/16.0-13 |
燃料タンク | 195L |
トランスミッション | 縦置き6MT |
車体重量 | 540kg |
型式 | RA167E |
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形式 | 水冷80度V6 DOHC+ツインターボ |
排気量 | 1494cc |
ボア×ストローク | 79.0mm×50.8mm |
圧縮比 | 8.0:1 |
最高出力 | 1000ps以上/12000rpm |
燃料供給方式 | PGM-FI 2インジェクター |
スロットル形式 | 2連バタフライ式スロットルバルブ |
過給機 | ターボチャージャー×2基 |