モータースポーツ > Honda Racing Gallery > その他 > Ralt Honda RT20
1980年代中盤、1.5リッターターボエンジン勢が台頭したことで、急速に活躍の場を失ったのがそれまでF1を支え続けてきた自然吸気3000ccのF1エンジン。具体的にはフォードコスワースのDFVが市場には余っていた。そこでこれら3リッターF1エンジンの再利用方法が検討され、これがF3000規定発足の契機となった。簡単に言えば、大量にダブついて行き場を失っていたコスワースDFVエンジンのリサイクル策である。
当時、FIAの格式上でF1に次ぐフォーミュラシリーズとして規定されていたのはF2であるが、1972年に制定された2000cc規定を長々と引きずっていたことでフォード系は早々に撤退、ワンメイク状態のBMWを破ったHondaのV6エンジンは規模を限定しての供給と、カテゴリー自体が沈滞化した状況に陥っていた。つまりF3000はコスワースDFVエンジンを有効活用し、あまりコストをかけることなく、F2に代わる新フォーミュラとして制定されたのである。ただそのままDFVを使用したのでは自然吸気のF1と変わりないため、最大回転数は9000回転に制限され、ステップアップ・カテゴリーとしての性能調整が図られていた。
F3000規定の施行は1985年からで、前年までHonda V6を積んでF2タイトルをほぼ総ナメにしてきたラルトも新たにHonda製のV8エンジンを搭載して国際F3000シリーズへ参戦する運びとなったのであった。ドライバーはベテランのジョン・ニールセンと、Hondaと縁の深いマイク・サックウェルに加え、数戦のスポット参戦という形でF1デビューを翌年に控えた日本の中嶋悟が駆った。
搭載されたエンジンの型式はRA386E。3000ccのV8という形式はこれまでのHondaには存在せず、あたかもF3000用に開発された新規エンジンであるかのような印象を与えるが、実はルーツがあり、元をただせば80年代序盤〜中盤までのF2を席巻したF2用V6エンジンにたどり着くから面白い。というのは、1気筒あたり約333ccのF2エンジンはそのまま2気筒足して8気筒にするとインディカー用の2650ccとなる。これが80年代中盤に、インディカー参戦を計画していたHondaとジャッド(エンジン・デベロップメント社)で共同開発が行なわれていたエンジンのベースとなる。このインディ参戦プロジェクトは消滅してしまったため、その権利はジャッドに委ねられていたが、ジャッドもまたこのV8を生産/供給/参戦することはなく、このプロジェクトによるエンジンはインディカーの舞台には登場しなかった。そしてこの時のエンジンのストロークを伸ばして3000ccとしたものがF3000用のジャッドBVであり、これがHondaの手に渡って小変更が施され、新たにRA386E型となったのである。
型番 | Ralt Honda RT20 |
---|---|
デザイナー | ロン・トーラナック |
車体構造 | カーボンファイバーモノコック |
全長×全幅×全高 | 3710×1625×800mm |
ホイールベース | 非公表 |
トレッド(前後とも) | 非公表 |
サスペンション (前後とも) |
ダブルウイッシュボーン+インボードスプリング |
タイヤ(前/後) | 225/600R13/330/620R13 |
燃料タンク | 非公表 |
トランスミッション | 縦置き6MT |
車体重量 | 540kg |
型式 | Honda RA386E |
---|---|
排気量 | 2997cc |
形式 | 水冷90度V8DOHC |
ボア×ストローク | 86.0mm×64.5mm |
圧縮比 | 12.0:1 |
最高出力 | 400ps以上/9000rpm |