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第2期活動での初優勝車

1984/Williams Honda FW09(ウィリアムズ・ホンダ FW09[4輪/レーサー])

F1本格参戦2年目、飛躍の契機となったマシン新進気鋭のウィリアムズチームとともに勝利を達成

Text/Akihiko Ouchi  Photos/Hidenobu Tanaka, LAT Photographic, i-dea

1984/Williams Honda FW09(ウィリアムズ・ホンダ FW09[4輪/レーサー])

第1戦ブラジルGP出場車 No.6 K.ロズベルグ

2位に入賞した開幕戦仕様のロズベルグ車がコレクションホールに収蔵されている。重厚なフォルムと華奢なサスアームの対比が印象的。

2位に入賞した開幕戦仕様のロズベルグ車がコレクションホールに収蔵されている。重厚なフォルムと華奢なサスアームの対比が印象的。

HondaのF1活動第2期において、記念すべき初優勝車となったのがこのWilliams Honda FW09だ。1984年にケケ・ロズベルグとジャック・ラフィットがドライブし、それぞれドライバーズランキングで8位と14位、コンストラクターズランキングでウィリアムズは6位を獲得する。

Hondaとウィリアムズは84年シーズンを見越して83年最終戦(南アフリカGPでロズベルグが5位入賞)からコンビを組み参戦。FW09シャシーの基本は1982年にロズベルグがたった1勝でチャンピオンを獲得したマシンFW08の延長線上にあり、やや旧式な部類に属していた。コクピットを覗けば一目瞭然で、シャシーモノコックはカーボンコンポジットではなくアルミハニカム構造を採用。また現代のF1マシンを見慣れた目からすると直線的でダルな印象の前後ウイング形状、超肉厚なノーズやキャビン骨格に驚かされる。対照的にサスペンションアームなどは見ていてこちらが不安になるほどに華奢である。

リアのボリューム感に比べ、ダルノーズが印象的なフロントはあっさりした印象。ウイング翼端板はフラット、ウイングのフラップは1枚だけと空力的思想は「必要最低限」しか感じられない。

リアのボリューム感に比べ、ダルノーズが印象的なフロントはあっさりした印象。ウイング翼端板はフラット、ウイングのフラップは1枚だけと空力的思想は「必要最低限」しか感じられない。

ハニカム形状のアルミモノコックシャシーについては、チーム・ロータスが81年の時点でカーボンモノコックの採用(タイプ87)に踏み切っていたことを考えれば時流から遅れた印象も与えるが、逆に“石橋を叩いて渡る”というこの堅実性こそがウィリアムズの特色、テクニカルディレクターのパトリック・ヘッドの性格だったと言うこともできるだろう。そうした意味では、先進の素材や構造に対して貪欲なほどに積極的なロータス(=コリン・チャップマン)とは好対照の存在となるものだが、歴史的に振り返ればHondaがウィリアムズの次にパートナーとして選ぶのがロータス(87年)であったから、なんとも数奇な巡り合わせでもある。

ウィリアムズは77年に創設されたばかりの新進コンストラクターだったが、80年にはドライバー(アラン・ジョーンズ)とコンストラクターの両タイトル、81年はコンストラクターズ、そして82年には再びドライバーズタイトルを獲得し、自他共に認める強豪チームの一角を占めていた。83年中盤、スピリット・チームにエンジンを供給しF1デビューを果たしながらも不振に泣き、新たなパートナーを求めていたHondaにとって、堅実な手法でF1界に食い込んでいたウィリアムズの存在が目に留まったのはむしろ当然の成り行きでもあった。一方ウィリアムズ側からこの組み合わせを眺めてみると、同様に唯一無二の選択肢であったことが見えてくる。83年はネルソン・ピケが駆るブラバム・BMWによるターボカー初のドライバーズチャンピオンが誕生した年で、前年にドライバーズタイトルは獲得したもののわずか1勝にとどまったウィリアムズにしてみれば、もはや自然吸気のコスワースDFVエンジンを使い続けるのは限界と見ており、新たにターボエンジンのサプライヤーを必要としていたことは間違いない。BMWの名も挙がったが結局ウィリアムズはHondaとのパートナーシップを選択した。つまりこれは両者のニーズが一致することで生まれたパッケージで、その後この組み合わせは好循環の輪を生み出し、年月を重ねることで正常進化を遂げていくことになる。

ドライバーの太もも両サイドにある骨格からも分かるとおり、モノコックはアルミハニカム構造。添えられたような形状のミラーも特徴的。

ドライバーの太もも両サイドにある骨格からも分かるとおり、モノコックはアルミハニカム構造。添えられたような形状のミラーも特徴的。

ただ84年にウィリアムズに供給されたHondaのV6ターボエンジン「RA164E」はスピリット時代に供給していたRA163Eの延長で、まだドライバビリティのコントロールが未成熟な代物。当初は大きなターボラグを持つ、扱いにくい特性だったとロズベルグは語っている。しかし開幕戦ブラジルGPでの2位入賞が大きな弾みとなり、試行錯誤を繰り返しながらもシーズン中に一気に熟成が進み、第9戦ダラスGPでロズベルグが駆るWilliams Honda FW09はついに優勝を飾るのだった。これはHondaにとって83年の参戦再開以来17戦目での「第2期初優勝」であり、その点で歴史に刻まれる1台となった。結局84年はこの1勝だけにとどまったが、ウィリアムズとHondaの蜜月はこのFW09から始まったと言える。翌85年は4勝、86年は9勝を挙げ名実ともにHondaはトップコンテンダーの仲間入りをすることとなる。

Williams Honda FW09

1984/ウィリアムズ・ホンダ FW09[4輪/レーサー]

1984/Williams Honda FW09(ウィリアムズ・ホンダ FW09[4輪/レーサー])

SPEC

シャシー

型番 Williams Honda FW09
デザイナー パトリック・ヘッド
車体構造 アルミハニカムモノコック
全長×全幅×全高 未発表
ホイールベース 2667mm
トレッド(前/後) 1803/1626mm
サスペンション
(前)
ダブルウイッシュボーン
サスペンション
(後)
ロッカーアーム+ウイッシュボーン
タイヤ(前/後) 11-13/16-13インチ
燃料タンク 220リットル
トランスミッション 縦置き6MT
車体重量 540kg

エンジン

型式 Honda RA164E
排気量 1496cc
形式 水冷80度V6DOHC+ツインターボ
ボア×ストローク 90.0mm×39.2mm
圧縮比 未発表
平均ピストンスピード 14.4m/sec
最高出力 660ps以上/11000rpm
バルブ形式 DOHC4バルブ、スイングアーム式カムフォロアー
バルブスプリング ダブルコイルスプリング
カムシャフト駆動方式 ギアトレイン
燃料供給方式 PGM-FI 1インジェクター
点火装置方式 CDI
スロットル形式 6連バタフライ式スロットルバルブ
過給機 ターボチャージャー×2基
潤滑方式 ドライサンプ

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