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中嶋悟とHonda、最強タッグの始まり

1981/MARCH Honda 812(マーチ・ホンダ 812[4輪/レーサー])

欧州F2で3度の戴冠劇を演じた最強エンジン全日本でも中嶋悟が操りチャンピオンを獲得

Text/Akihiko Ouchi  Photos/Hidenobu Tanaka, Koji Miura, Hiroshi Kaneko, i-dea

1986/MARCH Honda 812(ラルト・ホンダ march812[4輪/レーサー])

1981年全日本F2選手権出場車 No.37 中嶋悟

82年には日の丸カラーを纏ってマーチ+Hondaパッケージのまま欧州F2へスポット参戦。シルバーストン、ムジェッロ、バレルンガ、ホッケンハイムの4戦にエントリーし最上位は初戦の2位だった。

82年には日の丸カラーを纏ってマーチ+Hondaパッケージのまま欧州F2へスポット参戦。シルバーストン、ムジェッロ、バレルンガ、ホッケンハイムの4戦にエントリーし最上位は初戦の2位だった。

呼称「RA26○E」と表記されたHondaの2LのV6エンジンは当初、外観から推定が可能な80度のシリンダーバンク角以外、エンジンディメンジョンに関する部分は伏せられたままだったが、このエンジンにかかわった川本信彦(のちのホンダ社長)が「同じ大きさ(ボア)の燃焼室が6つあるのだから、理論的には(BMW4気筒に対して)1.5倍の出力が可能」というコメントを雑誌のインタビューで述べたことから、89mm前後のボアを持つエンジンであることが推測されていた。これはのちに90mm×52.3mmのボア×ストローク値から1万500回転時に310ps以上を発生することが公表され、Honda製V6エンジンの全容は明らかになるのだが、川本の言うマルチシリンダーの優位性は回転上限を決める平均ピストンスピードのフレキシビリティとなって如実に表れていた。

52.3mmストロークのHondaのV6エンジンは1万500回転時に約18.3m/秒のピストンスピードとなることに対し、最高回転数9500回転前後のBMWエンジンでは25.3m/秒と限界を超す(当時の限界値は20m/秒と考えられていた)数値となっていた。

乱暴だが、シリンダー内最大平均有効圧力が同じ(になるわけはないのだが、仮に)なら、回転上限に余裕を残すHondaのV6には、まだ出力向上の余地があったのである。もっとも、高回転化で真っ先に問題となるのは動弁系であるため、バルブサージング対策が先決問題とはなるが……。

V6レイアウトを常識的な60度バンクではなく80度バンクとしたあたりも、いかにもHondaらしい。慣性力/慣性偶力の点では不利なのだが、高回転域を常用するレーシングエンジンにとっては影響なし(キャンセルされる)と考え、シャシーマウント上の利点(低重心化、吸気系の全高を抑えるなど)が重視された結果である。

そうして早々にライバル・BMWを駆逐したHonda。欧州F2での覇権はいつまでも続くかと思われたが、時のFIAは84年いっぱいでF2規定のレースを終了し、85年からはフォードDFVエンジンを再利用した3L・V8エンジンでの国際F3000選手権をスタートさせると決定。Honda製V6エンジンの主戦場は、全日本F2のみとなった。

このRA261Eを手に入れた中嶋は81年の全日本F2第2戦からマーチ812へ搭載し2勝、見事全日本初タイトルを獲得する。快進撃はJPSカラーとなった82年も続き、連覇を達成し一躍国内トップドライバーに。この年は生沢とともに欧州F2へもスポット参戦を果たし、初戦シルバーストンでは2位となった(年末にはスポンサーの招待でロータスF1チームへと合流、初のF1ドライブまで実現している)。そして中嶋とHondaは84、85、86年に全日本F2を3連覇。この活躍がきっかけとなったか、中嶋とHondaの結びつきは強固なものとなっていき、86年の国際F3000スポット参戦、最終的には87年のF1フルタイム参戦へと結実するのであった。

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MARCH Honda 812

1981/マーチ・ホンダ 812[4輪/レーサー]

1981/マーチ・ホンダ 812[4輪/レーサー]

SPEC

シャシー

車体構造 スペースフレーム/アルミモノコック
全長×全幅×全高 4260×1860×980mm
ホイールベース 2576mm
トレッド(前/後) 1449/1476mm
サスペンション
(前後とも)
インボードスプリング/ダブルウイッシュボーン
タイヤ(前/後) 235/540R13/305/600R13
燃料タンク 115L
トランスミッション 縦置き5MT
車体重量 550kg

エンジン

型式 ホンダRA261E
形式 水冷80度V6DOHC24バルブ
総排気量 1996cc
ボア×ストローク 90.0mm×52.3mm
圧縮比 非公表
最高出力 310ps/10500rpm

その他

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